瞬間、心、生クリーム。
人生とは
暇と退屈の連続であると言ったのは誰であったか。
半ばフーテンと化している僕のようなグータラ大学生にとって、『毎日』とは、シンプルに暇であることと同義である。
男がひとりで暇なとき、快楽を求めてすることと言えば相場は決まっていて
それはつまり
暴食
である。
(変なことを考えたそこのあなたは、今晩は決して何もせず歯を食いしばって寝ましょう)
五月晴れの心地よいある日のこと、健啖家である僕は、ホットドッグを2つを食べ、蕎麦の特盛を啜った後、なにやら甘いものが食べたくなったので、馴染みの甘物屋へと向かうことにした。
その甘物屋とは、紳士淑女の皆さまならご存知であろう、『ミ●タードー●ツ』である。
あそこのドーナツはどれもが美味い。
一つ一つ味を表現していてはキリがないので割愛するが、種類が豊富であるが故の 迷い も存在する。
それは
一度の来店で、その時自分を100%満足させることは、極めて困難
ということなのだ(ドン!)
………。
なんとまぁ、緊張感に欠けた悩みであろうかという話はこの際置いておくとして。
色とりどりのショーケースを前にして、僕のテンションがぐいぐい上がっていったのはいうまでもない。
例えば。
糖分ジャンキーにである僕にとって、ポ●デリングはドラフト一位級のアブソリュートな逸品である。
さらに、ここで見逃すことができないのは、近年質の高いレパートリーを連発しているミートパイやセイボリーサンドドーナツ達だ。
食べたという実感を得やすいそれらはついつい手を伸ばしてしまいがち。
だが僕はそれだけには飽き足らず、満足度を高めるために、チョコ系を攻めようかと考えずに終わることはできないでいた。
その筆頭に挙げられるのはダ●ルチョコレートやコ●ナツチョコレートと言った歴戦の勇者達。
そしてその隣には、華やかなストロベリー系のイーストドーナツやドーナッツポップ達がまるでデビューしたてのアイドルのようにこちらを見ている。
ドーナツの一つ一つが個性を放ちながらも、お客様を満足させるという大きな目的を達成するために団結を厭わないその姿は、まるでアメコミヒーロー達がクロスオーバーするハリウッド映画もかくやと言わんばかりの輝き様なのであった。
うおおおおおおア●ンジャーズアッセンボゥ。
と、まぁこんな感じで。
席に座る前から幼稚園児みたいな僕であったが、とうとう自分の番になっても、何を選ぶのかを決めかねていた。
優柔不断が故の 決断 力不足である。
選り取りみどりは、時として罪なのだ。
悩む僕。
華やかなドーナツ。
さらに悩む僕。
歌い始めたドーナツ。
うむむむむむ。
そんなときだった。
ショーケースに向かって、一筋の光が差し込んだのは。
それはまるで、吹雪の中たどり着いた教会で、ネ●とパ●ラッシュが目にした救いの光にも似ていた。
そして、そこから降りてくるはそう、笑みをたたえた天使達…天使…てん…うおおえええ!?
ってこれ、エンゼルフ●ンチやないかい!
そう、あまりの悩み様を見るに見兼ねた神さまは純白の天使、もとい生クリームがたっぷりと詰まったエンゼル●レンチ僕に示したのだった。
こんな神々しい食べ物をどうして僕は見逃していたのだろう。
ゆーあーなんばーわーん
生クリームとはつまり救いである。
おめでとう。おめでとう。全てのドーナツにおめでとう。
てなわけで。
神様の啓示によって一つはエンゼ●フレンチに決定した。
さて、残る問題はエンゼルフレン●の相方となるドーナツをどーするかである。
(僕はミス●では、ドーナツを2つ買うことに決めている。
僕が5歳だった時に欲張っておばあちゃんに3つ買ってもらったのだが、食べきれないのを無理して食べた結果、現場であった京都駅ビルに甘美な放物線を描いてリバースしてしまったことがあり、その経験はいまだにトラウマのままだ。
みやびどすえ。)
たしかに、エンゼルフレ●チにおける一口の高貴さは、特筆すべきものがある。
しかし、こう言ってしまってはあれなのだけれど、いまいち迫力に欠ける面もあるように思うのだ。
よっし、こうなりゃバディは重めのやつでいくか…
生地はしっとり系で、しっかり揚げてあるやつにしよう。
そうなるとやはりオー●ドファッションが無難だろうか。
うーんでも微妙にチョコ被ってんだよなァ。
などと逡巡しながら再びショーケースに目を走らせる。
はっ!!
こっ、これはっっ!!
しっとり系で揚げてありさらにチョコが被らず一口が濃厚なドーナツではないか!
よーーーし
君に決めた
あとはお代わり自由のホットコーヒーを頼めば
今日の選択は
間違っていない筈だぁ!
だぁ!
だぁ…
ぁ…。
これ
エンゼルク●ームだ…。
素で生クリーム被りました。
ぱないの。
おしまい。
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