歓談夜話

あなたにとって、うまくいかない日があっても大丈夫です。下には下がいて、例えばそれは僕のことです。

届かなかった言葉。

 

届かなかった言葉達の供養をさせてください。

 

願はくば

 

誰かに届きますように。

 

『ミルクティー

 


樫の木の机の上で、ミルクティーを作ろう

君がミルクで、僕はオレンジペコ

時には砂糖を入れて

 


煉瓦色の中に溶ける思い出

きらきらと輝いている

 


いつか君と 旅先で買った

小さなスプーンでかき混ぜよう

 


カップの縁に口を寄せ

上目遣いで視線を交わしたら

出来上がり

 


樫の木の机の上で、ミルクティーを作ろう

 


僕らの朝は

どこまでも続くのだから

 


『青について』

 


青について考えるとき、僕は愛について考える

君を想うと海がみえる

遠く潮騒の音に君の声を聴く

 


誰かが浜辺でトランペットを吹いている

その音色は愛に溢れている

 


哀しみが空を覆い侘しさの煙草を吹かすとき

この青に生まれついた理由を

君はそっと教えてくれる

 


青について考えるとき

僕は君について考える

愛について考える

 


『童貞賛歌』

清き一日を過ごしましょう

愛に汚れるその日まで

 


右手は腱鞘炎で

左手はスマホを持つばかり

 


我らの誇りは塵と舞う

シングルベッドの片隅に

置かれたテッシュの空き箱の山

 


天河に翔けるその日まで

暁に弾を込めている

 


希望は捨てても

童貞捨てるな

 


『お母さんの歌』

 


少し曇った空の下

きみはいまどうしているだろう

小さな歩幅はそのままに

お買い物をしているのかな

 


きっとお母さんになって

今ごろ幸せなんだろうな

なんの苦労も厭わない

家族がそこにはあるんだろうな

 


お母さんお母さん

きみは優しいお母さん

子供達に愛を注ぐ

優しいお母さん

 


あの日

手を握ってたままで

ポケットにふたりの体温が

暖かくなっていたのを覚えている

あなたは今ごろ誰かのモノになって

それなりに喜んでいるんだろうな

 


いつか君の匂いも忘れてしまう

窓をあけて金木犀の香り

深呼吸してもあの日と同じか

もうわからない悲しくはない

 


お母さんお母さん

君は優しいお母さん

お父さんに愛を注ぐ

優しいお母さん

 


君の母乳が飲みたいよ

 


お母さんお母さん

あなたは優しいお母さん

かつて僕を愛した

優しい誰かのお母さん

 


『彼女』

雨の日日曜日

君は今日もアルバイト

頑張ってね気をつけてね

今朝はちょっと冷えるから

 


わからないふりをして

やり過ごす

これが正しいことなんだきっと

僕は知っている自分の本当の役割を


カップの中のコーヒーが

人知れず冷めていく

 

飲む人もいない

 

以下

 

せんりゅー

 

です。

 

 

秋雨や

昔のことと

割り切れる

自分のことを

冷たいと思う

 


秋桜

誘われ息を

吸いこんで

花粉症になったみたい

 


秋深み

理に葉は

散りぬれど

我が行く末は

知るべくもなし

 


我写す

野分の後の

水溜り

晴れ間の中に

いずれ消えゆく

 

お焚き上げは以上になります。

南無阿弥陀