歓談夜話

あなたにとって、うまくいかない日があっても大丈夫です。下には下がいて、例えばそれは僕のことです。

『生の目的〜他人の視線の中で生きること〜』

 

 僕が他人を嫌うことが出来ないのは、アリの巣の複雑さに愛好家が存在するように、其々の人生の中で複雑な模様を作り出す一匹の動物としての他者に興味があるからだ。

 他者が生み出す模様は、完全に理解できる場合だけが面白いわけではない。観察者である自分にとって、それは読み方を知らないだけで何らかの意味を持った象形文字のように見える時もあれば、浜辺に打ち寄せた波の形の様に、迫りはしても全く意味を見出すことが出来ないこともある。そして最も重要なことは、それぞれの模様の価値はいずれも全く同等であり、主体による読解の有無がそのまま優劣を示すことは無いということなのだ。

 人間はまた、自らの生き方や人生について自問する動物でもある。実存の中で生きることは、無用の困難に立ち向かっているだけの様に思えてくる。だが、結局はこの場合も、他者の目線からすれば、主体はなにかしらの模様を描いているに過ぎないのだ。

 死ぬまで生き、その中で、知らずのうちに描いていた模様の解釈を他者の視線に委ねる。そしてその覚悟を生きているうちに獲得することこそ、僕にとっての生の目的なのである。