歓談夜話

あなたにとって、うまくいかない日があっても大丈夫です。下には下がいて、例えばそれは僕のことです。

神の戯れに創りしもの『GKBR』

 

九月も半ば、残暑明けからぬ夜のこと。

 

帰宅して、いつものようにプレステとエアコンの電源をつけると、なにやら見慣れぬ、だがしかしよく知っている赤茶けた物体が、ポトリという音を立てて、目の前に落ちてきた。

 

それは、虫であった。

 

よく見るとそれには、触覚があった。

 

更によく見るとそれは、gokあwせdrftgyふじこlp‼︎‼︎

 

昔、風の噂で耳にしたことがある。

 

「やつらは時折、エアコンの室外機から、家の中にやってくる」と。

 

正直、都市伝説だと思っていた。

 

ばっきゃろーんなとこからくるわけねーだろばっきゃろこんにゃろー。

 

今は、その時の自分の首を軽く締めてやりたい気分である。

 

うぎゃーーーーーという成人男性らしからぬ叫び声に向こうの方も驚いたのか、素早い動きで本棚の裏に隠れてしまった。

 

何度見てもキメェ。

 

僕は動悸が激しくなり、脂汗をかきはじめた。

 

奇声を聞きつけた親が二階から現れ、既に事情を察知したのであろう、その手には、対害虫専用必殺の武器が握られていた。

 

それはまさしく、天空のつるぎが如く。

 

●キジェットであった。

 

奴が隠れたと思われる本棚の隙間に、躊躇なくジェットを噴射する。

 

HIT‼︎というRPGのような表示はなかったものの、むやみに噴射したそれもどうやら効き目があったらしく、逃れるようして奴はその姿を現した。

 

出会って4分。

 

5畳ほどの畳の上で、僕とGは対峙した。

 

ここであったが100年目。

 

ゲ●に殺された父の恨み、いまここで晴らさでおくべきか。

 

くらえ!必殺のギガ●イン!!

 

勢い良くジェットを噴射すると、奴は逃げる間も無く劇薬の直撃を食らった。

 

かいしんのいちげき

 

奴は苦しみのあまりひっくり返り、足をばたつかせる。

 

うひーーーキメェーーー‼︎

 

僕が死ぬ時には、潔く決して足などばつかせることなど無いようにしよう、キモいから…などと心を決めつつ、目を向けると、既に屍となった奴が畳の上に転がっていた。

 

南無阿弥陀

 

貴様も難儀な生き物に生まれてしまったものよ。

 

許せサ●ケ。

 

どこかで遠くの方で、「テレレレッテッテッテー」という音が鳴り、僕の中の何かがレベルアップした。

 

そうして、神の戯れに創りしものとの短くも激しい闘いは、ここに幕を閉じたのであった。

 

九月の半ば、残暑明けからぬ夜なのに。

 

僕はもう、怖くてクーラーをつけられません。

 

おしまい。